DRRR! !【連載】
□11×休日
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11×休日
臨也に見せられた携帯の画面には来良の生徒が映っていた。
この前、紀田君と一緒に保健室に来た子だ。
確か……竜ヶ峰帝人くん。珍しい名前だったからよく覚えている。
名前を呟きそうになって慌てて口をつぐんだ。
臨也の事だ。きっと何か企んでいるに違いない。
「その様子だと、彼を知ってはいるけど俺には教えたくないって感じかな」
「…いくら来良の生徒だって全員把握してる訳ないでしょ」
「竜ヶ峰帝人くん。エアコンみたいな名前だよねえ」
この前の保健室での会話を思い出す。
確か私も彼の名前を聞いて、臨也と同じ事を帝人くんに言った気がする…
コイツと同じ思考回路なのか…と思うと何だか少し自分の感性が不安になった。
「…会ったの?」
「これから会うつもりさ。彼、なかなか面白そうだから。良かったら、君から俺の事を紹介してくれても良いよ」
「断る」
「そう言われると思ったよ。ま、いいや。彼の好奇心なら放っておいても直ぐにお近づきになれそうだから」
「…。私、そろそろ出掛けるよ」
「おや。止めないんだね」
「私が止めた所で言う事聞くの?それに、別に関係ないから」
「‘関係ない’ねえ。生徒が聞いたら傷付くと思うけど。相変わらず、他人への興味が希薄だね。ま、昔よりはマシになったみたいだけどさ。
…何時まで‘彼女の操り人形’で居る気かな?」
その言葉を無視して立ち上がる。
‘彼女’とは姉さんの事だ。
「ごちそうさま」
まだ髪は少し濡れていたけど構わない。
これ以上、この話題について話を続けたくはなかった。
足早に玄関に向かうと、後を追う様に臨也も着いて来た。
「いってらっしゃい。今日は7時くらいまでは俺も家を空けてるからさ、買い物が終わったら適当に暇を潰しててよ」
「荷物…ココまで持って来いってこと?」
「場所が分からなくなったら携帯に連絡して」
一方的な会話に小さく溜息がもれた。私に拒否権はないようだ。
そこで、ふと臨也がこちらに手を伸ばしてくる。
何かと思って身構えていると、肩に掛かっている髪を少し持ち上げられた。
そのまま首の辺りを見つめながら、彼が僅かに口端を持ち上げるのが分かった。
「…な、何?」
「ん?いや、何でもないよ。そうだ。せっかく池袋に行くんだから、来良総合病院にお見舞いにでも行ったら?‘大好きな’お姉さんのさ。
そうそう。俺の代わりにシズちゃんにも挨拶しておいでよ」
ぱっと私から手を離した彼がペラペラと喋り出す。
一体何…?
疑問を抱えたまま、私は臨也のマンションを後にした。
‘大好きな’お姉ちゃん、ね。
ほんと…ムカつく。
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