DRRR! !【連載】

□09×クラッカー
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クルリとイスを回して臨也がこちらに体を向けた。
そして、そのまま立ち上がったかと思うと私の背後に回り込んで両肩に手を乗せる。
誘導されるままに今まで彼が座っていたパソコン前のイスに着席させられた。


「…今から?」


私が呟くと、まだ私の背後に立ったままの臨也が私の顔の高さに合わせるように屈む。


「仕事だぜ、優秀なハッカーさん。君の場合はクラッカーって呼んであげた方が良いのかな?」


そう。私の仕事と言うのは彼の情報収集のサポート。
他人のコンピューターシステムに侵入してデータを盗んだり、改ざんしたりするのが主な内容になる。


「来良でお悩み相談なんかやってないで、こっちを本業にした方が儲かるんじゃない?高校の時は気付かなかったよ。君にこんな特技があったなんてね」

「趣味だから、これは。匿名が溢れるネット社会で、本名が漏れないからって、好き勝手やってる人間たちがどんな奴なのかと思って」


最初は単なる興味で始めた事だった。
匿名性を盾にとって暴れまわる連中の正体を突き止めてやりたくて。
まあ、最初はそんな理由で始めたけど、いつの間にかクラッキングという行為そのものにハマっていったのだけど。


「それに、私は一般人だから危ない事には足を突っ込みたくないもの」

「へぇ、それは残念だったね。俺と関わってる時点で既に片足を突っ込んでるようなものさ」

「確かにね。…だったら臨也が自分でやれば良いじゃない。報酬が良いから手伝ってるけど、私はありふれた日常の中で生きていたいわ」

「出来ない事もないけど、君がやった方が早いし安全だからね。趣味でやってる仕事だけど、信頼を得る為には色々と大変なのさ。まぁ、君に危険が及ばないように気を付けてあげてるつもりだから安心してよ。それじゃ、後は宜しく。姫乃」

「ドコ行くの?」

「俺は寝るよ。ファイルに入っているリストを見ていつも通りにやってくれれば良いから。あぁ、終わっても帰らないでね。明日まだ君に頼みたい事があるんだ。じゃ、おつかれー」


人に仕事を押し付けて呑気なものだ。寝室があると思われる方へ歩みを進める臨也の後ろ姿を見送ってから、与えられた仕事に手を付け始める。
これまで何度か臨也の仕事を手伝って来たけれど、自宅にまで招かれたのは初めてだった。(招かれたと言うか強制的に連れて来られたけど…)

私に頼みたい仕事…?
また何か企んでいるのだろうか。

とりあえず言われた通りにパソコンのファイルを開くと、今回のターゲットのリストが並んでいる。

いったい何時になったら眠れるんだ…
時計の針はちょうど日付を越えた所だった。

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