DRRR! !【連載】

□06×いらっしゃい
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06×いらっしゃい


タクシーが停車したのは、ビルが建ち並ぶ路地の一角。
開いたドアを眺めていると、支払いを済ませた臨也に後ろから背中を押された。
「降りて」と短く声を掛けられ、私は考える間もなく大人しく従っていた。

車窓から外を眺めていたけれど、夜で暗い事もあり、いま居る場所を把握できていなかった。明治通りを通っていたので方角的には新宿方面だと思うけれど…


「上京したての人間みたいな反応するね。ここから少し歩くよ」


タクシーを降りて辺りをキョロキョロ見渡している私に一声掛けて、臨也が歩き出した。
土地勘も無いので何となく大人しく着いて行く。
5分くらい歩いて、とあるビルの前で臨也が止まった。そのままセキュリティが施されたエントランスへと入って行く。


「着いて来る?それとも来ない?どっちでも良いけど早くしてくれるかな」
「えっ、あ…じゃあ」


二択を示されて回答を急かされた私は、思わずロックが解除されて開いたエントランスの扉の中へと足を踏み入れていた。

そのままエレベーターに乗り込んだ彼に続いて何階かフロアを上がる。
臨也はと言えば、携帯を取り出して何やら文字を打ち込んでいた。



―チャットルーム

甘楽:こんばんわー☆誰か居ますぅ?

田中太郎:ばんわー。甘楽さん、今日は遅かったですね

セットン:太郎さんと今日はこの辺でお開きにしようかって話してた所だったんですよ

甘楽:えぇー皆さんだけでお楽しみだったんですかぁ。ぐすん

田中太郎:まぁまぁ甘楽さんw

セットン:太郎さん、wってww

甘楽:もぅ、みんなひどいですよぅ!ぷんぷん。

甘楽:あ、でもー、甘楽ちゃんも今日はこれからお楽しみなので今から落ちますねぇ。きゃ

田中太郎:何か良い事でもあったんですか?

甘楽:え、聞いちゃうんですか?やだ!太郎さんのエッチー><

田中太郎:いや、何の事だかさっぱり分からないんですけど

セットン:まぁ、よく分からないですけど、楽しんでください。あ、そろそろ落ちますね


セットンさんが退室しました。

――



「ここ?」


エレベーターの扉が開いたので、いまだ携帯と向き合ったままの臨也を見上げると彼はポケットに携帯をしまってエレベーターを降りる。
慌ててその後に続くとエレベーターの扉が閉まった。

それから少し通路を歩いて、臨也がある一室の扉の前で止まった。
ロックを外された扉が開くと、彼はスタスタと中へ入って行く。

さっきから黙ってるけど、ここは一体ドコ…?

そんな疑問を抱いたまま、私も彼に続いて部屋の中へと入って行く。
オフィスのような机や黒いソファが並ぶ空間を眺めていると、先を歩いていた臨也がフード付きのコートを脱いで、バサッとソファに投げかけた。


「いらっしゃい」


にこやかに言われて一瞬、何の事だか分らなかった。


…ここは一体ドコですか?
 

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