DRRR! !【外伝】
□高所×密室×無限ループ
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20分ちょっと電車に揺られ、下車したのは『東京テレポート駅』。
東京観光でお台場を回るなら、この駅が最寄り駅だ。
「さすがに、海風は冷たいねえ。それなのに、こんなに人が集まって来るんだから、日本を代表する観光名所の看板は伊達じゃないよ。
ん?何してるの?そんな所でボーっと突っ立てないで早くおいでよ」
「…ねえ、あのさぁ、ここで何してるの?」
駅を出てからスタスタと歩き出した臨也に問うと、彼は小さく肩を竦めた。
「君はここが何処だか分かってるかい?回りをよーく見てごらん」
「…お台場」
「正解。いいかい?お台場って言ったら観光エリアであると同時に、東京を代表するデートスポットだよ」
確かに、今日はデートに行くとか何とかで呼び出された。
でも正直、どうせまた、くだらない事に付き合わされるんだろうと思っていた。
例えば、自殺志願者の集うサイトのオフ会で、のこのこやって来た子をスーツケースに詰めるとか、ネット上で女のフリをして(ネカマというやつだ)呼び出した男性の哀れな様子を遠くから観察するとか…
「お台場がデートスポットだって事くらい知ってます。…で、だから何なの?」
それまで何歩か先を歩いていた臨也が私の前まで戻って来る。
そして、彼は唐突に斜め上を指差した。
「だからさぁ、君とデートしに来たんじゃない。まあ、俺がアレに乗りたかっただけなんだけど」
「…あれって?」
「あれだよアレ。かの有名な日本最大級を誇る大観覧車」
確かに、彼の指先が示す方向には、煌びやかなイルミネーションに彩られた大きな円が夜空に浮かぶように、そびえ立っていた。
「まさかとは思うんだけど、あれに乗る為だけに、わざわざお台場まで来たの?」
「やれやれ。君はこの場を訪れている人間全てを否定する気かい?
まあ、ここに居る全員が全員、あの観覧車に乗りに来ているとは言わないけどさぁ、多かれ少なかれ、アレを目的に来ているカップルも居ると思うけど?
まあ、君の反応は予想通りだったけどね」
「デートって言うけど…私を一緒に連れてくる意味はあったの?」
「そうだねえ、特に無いよ?ただ、俺もやることが無くて暇だったから、呼び出されて嫌そうな顔してる君を見るのも良いかと思って。
ああ、まさに今みたいな顔だよ」
「……」
答える代りに溜息をついた私は、臨也に向けていた視線を前に戻した。
目の前には巨大な観覧車。
乗車待ちの列に並んで、その大きな円を見上げる。
確かに、色とりどりに輝くネオンは、夏の夜空を彩る花火のように鮮やかで、見ていて悪い気はしない。
そう言えば…
観覧車なんて乗るのは何時以来だろう。
小学校に上がってからは、姉さんが入院していたので、家族で遊園地になんて行ったことが無かった。
幼稚園の時は行ったかな…?
過去の観覧車に乗った記憶を探しているうちに、いつの間にか順番が回ってきていた。
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