空想詩集
□夏の詩編(仮題)
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『夏の凍れる海』
曇って風の強い日の海
夏なのに
灰色というか鉛色で
でも雲間から
夏の太陽の光が差すと
白銀色の
光の絨毯(じゅうたん)が広がって
銀色の海の表面をすべる
それは縮んだり伸びたり
ちぎれて広がって
ギラギラと
風に押されて流れる
川に流した着物の帯や
羽衣(はごろも)のように
光の絨毯は波に乗って
どこまでも一緒に
流されて行きそうでいて
光の舞踏場からは
流れ出ない
まるで冬の海を流れてくる
流氷のようにも見える
ギシギシという音さえ
聞こえてきそう
END.
作/新名在理可