黒蝶奇譚

ある日の「夢現の物語 織宿」の記録(完結)
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「驚かせたみたいだね。これがぼくのアート織宿の能力『黒蝶奇譚』の技で、きみは夢の世界を体験しているんだよ」

 実際は『黒蝶奇譚』の技は使ってはおらず、『我語りて…』の効果で擬似的にそのような効果を得ているのだが、七偲はそんな事はおくびにも出さず、そう言った。

「え、そうなの? ……でも、いつの間に来たのかしら?」

 声を掛けられた少女が振り返り、戸惑うように言った。

「まぁ、その辺は深く考えちゃだめだよ? せっかく、こうしてきれいな景色の中にいるんだし。
 それにぼくは、ちょっときみに聞きたいことがあるんだ」
「……何かしら?」
「それはね……」

 と言って、七偲は少女に近づき正面に立つと、少女の両肩に手を置いた。さらに、少し上体を相手側に預けるように傾けて顔を近づけてくる。
 「え?!」と、少女は七偲のその大胆な行動に対して驚きの声を上げる。
 そして、次には、彼女の耳元で発せられた七偲の「ぼくのこと、好き?」との質問に、「……ええっ?!」と少女は、質問の意味を理解するにつれ、顔を真っ赤にした。


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