想像絵本2
□ぼくとよげんしょと夏休みの思い出(バージョンA)(完結)
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Scene.3 ウソつき!
200X年7月2X日、夏休みに入ってから数日がたった。
けど、ヒマだ。
友達と遊びに行くでもなく、毎日、家の中でゴロゴロしている。
やることがないわけじゃない。
夏休みの宿題が山ほどある。
だけど手がつかない。
やりかけの宿題を放り出したまま、フローリングの床の上でごろんと大の字になって、天井を見上げている。
ふと、視線を横にずらすと、テーブルの上で麦茶の入ったコップが、だらだらと汗をかいていて、まだ冷たさを主張している。
でも、なんとなく、ぬるくなっていそうにも見える。
「あーあ、つまんないの」
ぼくは、ごろんと、横向きにころがった。
そのままごろごろと部屋を横切ってころがっていくと、プンと桃の香りがする別の部屋にたどり着いた。
そこは、桃の香りとは別に、田舎のおじいちゃんちの家で嗅(か)いだことのある匂いも混じってただよっていた。
もう、ずっとぼくんちでも、毎日のように嗅ぐようになった匂いだ。
でも、どこかずっと遠い世界のことに思える。
それは、むせかえるほどで、部屋全体が、かすんで見える。
ふと、お父さんと目が合った。
写真の中でお父さんが笑いかけていた。
『また、来年に二人でここに来ような』
お父さんが去年言っていた言葉。
でも――。
「ウソつき!」