過去小説1

□王子と商人T
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つまらない。

この王国を占める城の玉座で、一人の青年が呟いた。


彼はこの国の王子であり、秩序であるという。
秩序が決めた掟は絶対で、それは王子の独断の塊だ。だがそれにより平和な国が保たれている。
治安を考えての勅令よりも王子の暇潰しに出される場合が多いのがなければ国民の心に更なる平和が訪れるのだが。
しかしそんな王子が治安を管理する国でもクーデターは無く、今のこの世界では誰もが争わずに済む唯一の国である。


平和なのは良い事だけど、暇すぎるんだよね…


王子が本来座ってはいけない玉座に堂々と腰を沈めていると、王が誰かと共に入ってきた。

しかし王の間に招くにはずいぶん貧相ないでたちだ。

頭から膝までを隠すくたびれたマントに、片手には半月の蔓で編んだ籠を下げている。下町に多くいる物売りそのものの格好である。
「王子よ。そこは儂の席だぞ」
毎度のことなのか呆れたように王は言う。
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