過去小説1
□独白
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ある日、イタリアの街角で見付けた。
あの頃の…そう、十年前のあなたとよく似ているその後ろ姿。
違うところと言えば、幾分伸びた後ろ髪だけ
僕は思わず足を止め、思わぬ再会に胸が弾んだ。
不覚にも暫く立ち止まっているうちに、溢れた人混みにあなたを見失っていた。
もう会えなくなるのが嫌で、すぐにその通りを抜け出して僕は
足早に
あなたの姿を求めて、追い掛けていた。
あの頃はいつも、あなたが側にいるのは当たり前と思っていた。
(ふっ…。自惚れも甚だしすぎですね…)
こんな僕でさえも、愛してくれていたというのに…
そんな優しいあなたまで、僕は…散々傷付けてしまった。
でも…本当は、ずっと離さないで、抱き締めて、その可愛い唇にキスをして。