過去小説1

□王子と商人X
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「王と家光のせいだよ…」
「何がですか?」
恭弥は舌打ちをしながら明後日の方を見た。
少しの間試行錯誤したあと恭弥は綱吉を振り向いて言った。
「僕は、二人きりになりたくてココを選んだんだ。でも王に先読みされて、家光を通して君の知人に広まった。僕達を邪魔するためにね」
苛立ちを隠せない恭弥は、始終眉間に紫波を寄せてどこかを睨んでいる。
綱吉は悪いことをしたわけではないが、何故か申し訳なく感じてしまう。そのため、無意識にすみませんと口をついて出た。
「謝らないで。君は悪くない。僕が迂濶だったんだ」
綱吉の頭を撫でてやりながら、なるべく優しくそう言った。
「それに、ココにいる間はずっと二人きりだからね」
綱吉を包むように抱き締めて、額に唇を落とした。気持よさそうに目を閉じた綱吉に愛しさが増す。

そう、何を苛立つ必要があるのか。
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