小説4
□サンタさんがやって来た
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「ツッ君、サンタさんに何お願いするの?」
優しく微笑みながら、母は我が子に問掛けた。
「………オレもう24だけど」
息子は、いきなり何を言い出すのかと言うような目で母を見る。だが母は本気らしく、再度同じ質問をしてきた。
「サンタさんは本当にいるのよ」
「……じゃあ、そのサンタが欲しい」
「それは無理じゃないかしら」
「やっぱいないんじゃん」
「いるの。ツッ君は青が似合うから、青のお洋服にしたらどうかしら」
「え、母さんが決めんの?」
「靴下下げておきなさいねー」
最後におやすみと言って、母は寝室へ行ってしまった。
綱吉は親孝行の独身だ。
そのため親と一緒に暮らしているが、サンタだなんて親の口から聞くのは小学生の頃以来だ。一体我が親は何を考えているのだろうか。
「起きとこうかな」
綱吉はそう言って、念のためにコーヒーを作りにキッチンへ向かった。
そして日付が変わっていくらか経った頃、窓の外を見ると雪が降っていた。
「あ…寒いわけだ…」
窓から視線を外し、後ろにあるクローゼットからカシミヤのセーターを取り出してはおった。
それから雪をもう一度見ようと振り返る。