ひかり求めて・・・
□第二話
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──お前は要らない存在なんだよ
うるせぇよ
──誰がお前なんかを必要とするんだ?
うるせぇって言ってんだろ
──あんたも所詮1人なんでしょ?
消えろよ
──誰もお前を仲間だとも家族だとも思わないさ
消えろ消えろ消えろ全部無くなれ──・・・
女だと言った瞬間のカナンの顔は言葉では説明しようがなかった。驚愕とも言えないし動揺とも言えなかったからだ。ただそこでかたまり、じっと不思議そうな目で俺を見ていた。
「なんだ、女って言われるの慣れてねぇのか?」
「え・・・いや、セシアもケールも知っているし・・・でもまさか初対面で言われるとは思わなかったから・・・」
カナンは少し恥ずかしそうに俯いた。こう言う仕草をすると女にしか見えない。戦闘中は勇ましい勇者様だがな。
「なんで男っぽくしてるんだ?」
「・・・やっぱり勇者は男でなくちゃいけない」
「なんでだよ」
「・・・世界は女の勇者なんて望んでいない。凛々しくてたくましい男の勇者を待ち望んでいる。私は少しでも男に近づかなきゃいけない。男の様に振舞って、男の口調を使って誰が見ても男に───」
そこまで言うとカナンは言葉を止めた。今にも泣きそうな顔で俺を見た。誰かの言葉を自分で言って自分を追い詰めているようだった。自分に言い聞かせてる様にも。
「お前自身はどうなんだ?」
「え・・・?」
「お前今自分のこと“私”って言った。お前自身は女でいたいんじゃねぇの?」
「───っ!違う!俺は男だ!男でなくちゃいけないんだ!」
「だったら別にいいけどよ。お前がそのことで自分を追い詰めてるならそんな勇者に俺は世界を救ってほしかねぇな」
てっきり傷ついた顔をするだろうと思ったが、俺の考えとは裏腹に、カナンは驚いた顔をした。
「・・・なんだよ」
「いや・・・昔・・・そう言ってくれた人がいて・・・」
そう言ってカナンはまた俯いた。しばらく沈黙が続いてから、カナンは俯いたまま喋りだした。
「・・・女でいていいのか?」
「あたり前だろ。男と女は昔々神様が創ってくれたありがたいもんだからな」
そう言うとカナンは少し顔を上げて笑うような仕草をした。
単純。
でも単純なヤツの方が利用しやすい。
「でも女らしくってどうしたらいいんだ?」
「俺が教えてやるよ。何でも聞いてこい」
この言葉でこいつは俺を完全に信用する。世界を救わんとする勇者。ここまで利用価値のあるやつはいない。