ひかり求めて・・・

□第一話
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昔々あるところに小さな王国がありました。その国では念願の子供が女の子だったためにお姫様は男として、後継ぎとして育てられました。
ある日お姫様は森で猫と犬と鳥に出会いました。

猫は「王子様お友達になりましょう」と言いました。

犬は「あなたは立派な王様になるでしょう」と言いました。

そして鳥は───








また夜が明けた。いつものように日が昇る前に朝の稽古をしていた。女なのにかなり短く切った髪。手には稽古でついてしまったであろう無数のマメ。胸にはきつくさらしを巻いている。

 女なのに・・・

こう思うことは祖父から禁じられている。カナンはふぅとため息をついた。彼女が男として、そして勇者として育てられたのは父親が原因だった。カナンの父、英雄オルテガは魔王討伐に出て火山に落ちて死んだ。カナンが3歳になった夜のことだった。その日からカナンは男として育てられた。父の後を継ぎ魔王討伐に出るために。

「振りがまだ甘いな。そんなことじゃ父親を超えられんぞ!」

「はい・・・おじい様・・・」

今起きてきたのだろう。英雄オルテガの実の父でありカナンの祖父である。カナンを男として育てた張本人だ。

「お前は今日から旅に出るんじゃぞ?そんなことでどうする!」

そう、カナンは今日旅に出る。父親の後を継ぎ魔王討伐の旅へ。

「はい・・・」

なぜ・・・私は英雄の子として生まれてきたんだろう・・・?せめて男だったら・・・

「まさかお前逃げ出す気じゃなかろうな?」

「まさか・・・俺にはそんな気全然ありません」

逃げ出せるものなら逃げ出したい。私だって女の子の格好とかしてみたい。でも・・・そんなことしたらあなたはお母さんを責めるから・・・。

「大丈夫ですよおじい様。俺はちゃんと魔王を倒し帰ってきますから・・・」

期待に答えなきゃ・・・。お母さんに笑ってもらいたい。おじい様に誉められたい。でも頑張っても頑張ってもお父さんの影が追って来る・・・。男にしか見えないこの格好・・・。私は自分が大嫌いだ。
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