破天荒な嵐たち
□第1話
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「うわぁぁぁぁぁ!!」
俺、レスト。勇者。
まぁ勇者ってのは周りが言ってるだけで本当の勇者は俺の父親だ。
でも魔王討伐に出てるって事は俺も勇者と名乗った方が正しいのかも知れない。
とりあえず自己紹介は後にして、なんで俺が大声を上げているのかと言うと、魔物に襲われているからだ。
「んで一気にこんな大量に襲ってくんだよー!!」
アレなんだよ、カザーブからロマリアへの帰りに野宿するからって森ん中歩いてて食えそうなキノコがあったんで採ろうとしたらおばけキノコだったんだよ。
考える間もなくその場から逃げ出した。
「まぁレストさん。なんて無様な逃げ方ですの?
それに勇者たるものこの様なことで逃げてはいけませんわ」
「人間諦めも大切だろー!!」
走って仲間の元へ戻ればこれだ。
こいつは従姉のリン。アリアハン騎士団最年少女団長だった。
うちの家系の血を素直に受け継いでいて、剣の腕はピカイチ。さらっさらの長い紫の髪に童顔の綺麗な顔は、うちの家系じゃありえないけど。
「仕方ありません。お退きなさい」
リンは茶色い皮製のワンピースのスカートを揺らし、腰の細剣に手を掛けたと思うと、見えない速さでおばけキノコを真っ二つに切った。
「た、助かった」
「油断すんの早いって」
後ろからした声に振り返ると、今まさにどくイモムシが俺に襲い掛かっている。
「ギャァァァァァ!」
「ヒャド」
低い透き通った声がどくイモムシを氷らせる。その隙にリンがまたもや真っ二つに切った。
そしてどくイモムシの背後からにやけた顔をした赤い髪の男が現れた。
「バッカだなぁレスト。こんなのにも勝てないのか」
「う、うっせぇティル!構える暇がなかったんだ!」
ティルはアリアハン王宮魔道師で俺の魔法学の師匠。
えらく美人好きで、俺に魔法を教える事になったのも俺の美人な母さんが頼んだからで、旅に付いて来たのはリンが美人だからだ。
自分の親族をそう言う目で見られるのは正直うぜぇ。
いい加減、その高い鼻をへし曲げてやろうかと思うのだが、ティルの方が一枚上手で逆にやり返される。
「がはははは!そこまでだー!」
リン曰く、「まぁなんて下品な笑い方ですの?」だ。
あと格好も下品極まりない。黒のビキニパンツに上半身裸でマント、んでもって覆面。バカじゃねぇのこいつ。
「がはははは!何処のどいつだが知らねぇがこのカンダタ様とその一味に手を出そうなんてそうはいかねぇぜ!どーせお前らも俺達のお宝が目当てだろう!」
茂みの中からガサゴソと男達が現れた。
「どいつもこいつも汚ねぇ奴らだな」
「一生関わりを持ちたくない部類の方達ですわ」
「ならリン、俺と関わりを持たない?」
「ここでその話すんなぁ!」
「ナメとんのかてめぇら!」
大声を上げた覆面野郎を睨みつけた。
うっせぇんだよ。たまたまここへ来ただけの人間になんで変な言い掛かりしやがって。